友だちとは、困ったときに相談できる奴のこと

年明けのプチ同窓会

年明け、地元で高校の同級生ら5人と飲み会をした。東京に住んでいる奴が2人、関西が3人、北海道が1人。これだけメンツが揃うのは3年ぶりくらいの話だった。

みな大学3、4年生で、就活の最中だったり新生活を控えていたりする頃だ。最も盛り上がるトピックは自ずと「将来の話」だった。

「公認会計士を目指して浪人するわ。」

「満足の行くところで内定もらえた。マーケターになるわ。」

「弁護士なりたいけど就活で何アピールすればいいかわからん。」

みんな口々に自分の近況と理想のゴールを語った。仲の良い同級生の将来の話なんてただでさえ面白いに決まってる。その上で、いまちょうど「分岐点」に立っていていることがまた良かった。「理想が現実になるか!?」の希望とスリルをいい塩梅に混ぜ込んでいたから。

でも、少し気がかりなことを言う奴もいた。

「いやー、資格試験の勉強してたけど、こないだの試験が全然ダメやったで心折れちゃったんよね。ふつうの就活に戻ろうかなーと思って。」

彼は続けて言う。

「今は京都に住んでるけど、1年休学して東京で就活しようかなーって考えてるんよね。もちろん親には頭下げて、バイトで生活費稼ぎながらになるけど。なんかいまシェアハウスがアツいらしいじゃん?、笑」

お前シェアハウスとか絶対できないタイプだろ!と周りが言っておどける。大変な話を笑いに変えてやるのが飲み会に同席する人間の務めだ。

私も顔ではケラケラ笑っていた一方で、心の中では「こいつを止めてやらなくちゃいけない」と思っていた。彼が正常な判断をしているとは思えなかった。もともと彼はかなり優秀な方だから、色々うまくいかなくて焦っているのだと思った。

慣れない環境でバイト暮らししながら就活するだなんて、しんどいというかムリだ。そんなこと休学してまでするもんじゃない。就活に振り回されてる。苦手そうなシェアハウスまで「しなくちゃいけない」と思い込んでしまってるじゃない。いったん落ち着けよ。

しかし、はっきりとそう言いだすことはできなかった。彼を傷つけてしまうかもしれないと思った。ここ数年大して連絡もとってないし、彼の詳しい事情を知らない。彼からしたら私は「就活に成功して高みの見物をしてる人」に見えてるかもしれない。勝手なこと言うなよ!こっちは必死なんだよ!と、思わせてしまうかもしれない。

結局、「あんまり深刻になるなよ。ファーストキャリアなんて、どうってことないさ。おれは30歳まで学生のつもりで生きてこうと思ってるよ。」とだけ言って終わった。他のみんなも止めることはしてくれなかった。

次の日になって「やっぱり、もっとはっきり手を差し伸べれば良かった」と後悔したので、一応「就活で困ったことあったら気軽に連絡してくれよ、助けになれるかもしれないから」とだけLINEを入れておいた。

悩みの尽きない友人

別の友人、Yの話をしようと思う。

彼は大学の友人で、とってもチャーミングなやつだ。鉄道オタク・旅行オタクで、仲間内で小旅行をするときはいつも楽しそうにツアーガイドをやってくれる。鉄道や地理のことならなんでも知っているので、いつもその博識に驚かされる。

その傍らで、社会に適合しないことも大得意だ。例えば、彼は学部の最初に取る「落とす人はだれもいない」と言われるような単位を出席不足で落としている。遅刻、無断欠席、音信不通などもしょっちゅう。Yの留年が決まったときは「あ〜やっぱりか」とみんなで言い合った。

Yは自分の「社会不適合」なところが大キライで、いつも悩んでいる。家族とソリが合わないときもあるらしい。それが原因で、彼は2ヶ月に1回くらいのペースでふさぎ込む。「どうしたの」と聞くと、大抵は「いやぁ、自分ってクソだなぁって思って…」というセリフから、お決まりの鬱トークが始まる。

筆致からも伝わるかもしれないが、私はそんなYのことをあまり心配していない。

それはYのことがどうでもいいとかじゃなくて、落ち込んでいるYにはいつも「どうしたの」と聞けるからだ。Yが落ち込んだとき、大抵それを把握できているからだ。本当に必要なときはケアに回ることができるからだ。

なぜなら、Yがいつも自分の話をしているから。Yは友達と会うと、聞いてもいない自分の話を遠慮なく入れ込んでくる。会っていないときでも、グループ/個人のチャットに「最近〇〇でぇ、」と脈絡ない話を送ってくる。それも8割は悩みの話だ。

最初は、ただ空気が読めないんだなと思っていた。実際そういう部分もある。周りがイマイチな空気になっていても彼はお構いなしだ。

だけどしばらくして、これは彼なりの生きる知恵なのだとわかった。悩みの多い彼は、普段から自分について「言いふらす」ことで、本当に困っているときに周りに伝わるようにしているのだ。

副産物もある。ダメなとこ、変わったところも含めてなんでも自分をさらけ出しているので、周りの人は次第に彼のことが愛らしく思えてくる。それが彼の魅力の秘訣だ。

Yはたしかに「めんどくさい」友人だ。だが、それでも私は彼の悩みを聞いてあげたいと思うし、それは他の人も同じだと思う。だって彼は私たちの友人で、それもとびきりチャーミングな奴だから。

困ったら相談してくれよ

シェアハウスの彼とも、Yみたいなコミュニケーションが取れていたら良かった。そうしたらきっと、もっとしっかり肩を貸してやることができた。

今回はたまたま正月に集まったから悩みを聞くことができたけれど、そうじゃなかったら悩んでいることすら知らなかったかもしれない。というかほぼ100%そうだ。

友達なのに、仲良し同級生なのに、それは哀しい。他に助けてくれるやつがいるんならいいけど、そうじゃなかったらどうするんだよ。

だから、普段からもっとどうでもいいことで連絡を取り合えたらと思う。脈絡もなく「最近どうよ?」とかLINEしてみようと思う。悩みが出てきたら「連絡してみようかな」と思える関係性でありたいと思う。困ったときに相談できるのが友だちってやつなんだから。

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