とにかく、何度も、伝える。

繰り返し聞いた祖父の教え

僕の祖父は、昔から「量じゃない。種類をたくさん食べろよ。」と言っていました。

それはもう毎日、ご飯を一緒に食べるたびに、同じことを繰り返すのです。実家の食卓にはいつもたくさんの食材を使ったたくさんのメニューが並んでいました。ひとつひとつの料理の量は少なかったのでテーブルには小皿がいっぱい置かれていたのを覚えています。

祖父の呪文のような言いつけは、正直うっとうしかったし、子どもだった当時はなぜそれが良いことなのか、どうしてそんなに口をすっぱくして言うのかわかりませんでした。僕は好き嫌いが多い子どもで、苦手な野菜も多かったし、祖父の言うことを聞かず食べ物を残すこともありました。

その後大学生になり、実家を出て一人暮らしを始めました。そこで自分でご飯をつくるようになると、どうしてか、そのたびに祖父の言葉がちらつきました。

カレーを作った日の次の日、1日目の残りを食べようというときも、「あれ、なんかこの2日間で食べる種類少ないぞ、、、」と不安になります。そしてその不安を取り除くために、スーパーで惣菜を買ってきてしまうんです。

僕は「多くの種類食べろ教」の洗脳を受けたんだと思います。

「繰り返し伝えること」が持つ力

一度きりの情報伝達、コミュニケーションで人の行動を変えることは難しい。実際僕は、小さいころは多くの種類を食べることを実践できていませんでした。

けれど、何度も伝えることで、それはその人の行動を左右しうる”信念”になることがあります。

「信念」は記憶や繰り返される頻度、新しいメッセージを伝える人物の信頼性と深く関わっている。

『説得の心理技術』

伝えたいことの根拠は、実はそれほど重要ではないのかもしれません。ある程度根拠の乏しさがあっても、それを熱心に何度も伝えることで、人は「なんかそんな気がしてくる」ものです。

僕も種類をたくさん摂る根拠はよくわかりません。でもなんかバランスよさそうだし、今はそれが良いことな気がして実践しています。

興味深いのは、多くの人々が抱いている「信念」に、事実に基づいた根拠がないことだ。至高の神の存在を証明できる者はいないが、世界中の多くの人々が神の存在を信じることで大きな慰めを感じている。

『説得の心理技術』

これはビジネス、特に企業の価値観とも言えるパーパスや経営者の思想などを従業員に伝達する際などにも非常に重要なのだと思います。

株式会社ナレッジワークのCEOである麻野耕司さんも、経営者が従業員に”信念”を何度も伝えることの重要性・必要性があると述べています。

「これくらいは言わなくても分かっているだろう」「一度言ったから伝わっているだろう」

そうした甘い考えを捨て、自分の考えを、想いを、何度も何度も、語りかける必要があります。

「スタートアップにおける経営者の振る舞いと見られ方」

僕のインターン先では、毎日の朝会で使うレジュメの冒頭に会社理念が書かれており、毎朝目を通すようになりました。おかげでインターンの自分ですらその理念をそらんじることができるほどです。

これも立派な「洗脳」でしょう。

もちろん、人の行動を変えたり説得したりするのに影響するのは頻度だけではありません。『説得の心理技術』で示されているように、誰が伝えるかも重要でしょうし、説得される側のそれまでの経験・記憶なども影響を与えます。

でも第一歩として、僕は”頻度”の重要性を今一度見直してみたい。惣菜コーナーの「7種の野菜が入ったサラダ」を見ながらそう思ったのでした。

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